2025/11/07
9月10日(水)~11日(木)の2日間にわたり、TRiSTARフェローおよびプリフェローを対象としたサイエンスキャンプを開催しました。
本プログラムでは所属機関・研究分野を超えた交流を行うことにより、多様な分野を専門に持つ研究者との人脈の拡大と、自己研鑽による自らの研究課題に対するインスピレーションの獲得を進めることを目的として実施し、第1期~第期及びOBフェロー・プリフェロー15名、ゲスト3名、講演者3名、主催関係者13名の計35名が参加しました。さらに、オンラインでも話題提供者1名、株式会社トヤマからは講演者4名を含む多数の社員にご参加いただきました。


例年、初回の参加者のみが発表する3分間スピーチを採用していましたが、今回は、全参加者が1分間で研究を紹介する1分間スピーチを採用。今回のテーマ「Looking Beyond the SDGs: Igniting International Crossover」を踏まえ、自身の研究内容に加え、解決を望むSDGsや研究が貢献できそうなSDGsについての紹介も行いました。半導体、がん研究、材料科学、人間のインタラクション、食行動、グリーンインフラなど、学問領域を超えた多彩な研究テーマが披露されました。
今回のテーマ「Looking Beyond the SDGs: Igniting International Crossover」を踏まえ、オーストラリア、日本、シンガポールからそれぞれ講演者をお招きしました。

「農業廃棄物を資源化するナノセルロース技術」
Amiralian博士は、農業廃棄物から持続可能なセルロースナノ材料を創出する研究についてご講演いただきました。プラスチック汚染や資源枯渇といった地球規模課題を背景に、生物由来素材による繊維、ゲル、フィルムなど多様な形態を開発事例をご紹介いただき、生物由来素材による農業・電子・医療分野への幅広い波及可能性を示されました。
「SDGsの先にある社会変革と日本のイノベーション投資」
國見氏は、金融の立場から持続可能性の枠組みを超えたイノベーション創出の重要性についてご講演いただきました。DBJの取り組みを紹介しつつ、技術革新・社会分断・気候変動など2030年以降の課題に備えるための「投資の集中」「新しい思考法」「コミュニティを超えた連携」「長期的視点」の4要素を力強く提言いただきました。
「高齢社会における“シルバー経済”の可能性」
Straughan教授は、高齢者を“社会的資産”と捉える視点から、シンガポールの高齢化研究センターROSAの取り組みを紹介していただきました。月次追跡調査「Singapore Life Panel」により得られた膨大なデータを基に、新しい働き方・コミュニティ形成・幸福度の向上に向けた社会設計の方向性について共有いただきました。

グループワークでは、SGDsの先の探索をすべく「エフェクチュエーション(Effectuation)」理論を用いた共創的な対話を行いました。この過程で参加者はブレインライティングによるアイデアの量産と投票を用いた実践的な意思決定プロセス、続く、分野横断的なディスカッションにより、共創の実践に取り組みました。
「健康を保つ」、「温暖化を抑制する」、「AIとの共存」、「子供たちの体験格差」、他

サイエンスキャンプ2日目の会場をご提供いただいた株式会社トヤマさまより、遠藤社長による講話、施設見学、社員によるご講演、合同ポスター発表を行いました。
遠藤社長からは、同社が長年培ってきた高精度金属加工技術と、地域に根ざしながらもグローバルに挑戦する企業姿勢についてご講演いただきました。技術開発へのこだわりと人材育成への熱意に、参加者は深く共感しました。続く施設見学では、製造現場や試験設備を間近に見学し、研究と実装の接点を肌で感じる機会となりました。現場の技術者による説明を通して、大学での基礎研究が社会の中でどのように生かされるのか、そのリアルな一端を学ぶことができました。
また、トヤマ社員3名による講演では、「現場で求められる研究力」「異分野協働の実際」「挑戦を支える企業文化」などの視点からお話しいただきました。ポスターセッションでは、株式会社トヤマからもポスターを掲示いただき、企業で行われている研究について興味深く意見交換が行われている姿が多く見られました。多数の株式会社トヤマの社員にご来場していただき、専門深化力、俯瞰力の育成がはかられたと感じた参加者が多くいたようです。
最後に行われた自由討論「次世代の産学連携の在り方」では、大学と企業が「共鳴しながら共創する」新しい関係性について活発に意見交換を実施し、研究者と企業人が互いの視点を共有することで、新たな共創の可能性が感じられる時間となりました。参加者からは、「現場を知ることで研究の意義が再確認できた」との声も寄せられました。
本プログラムを通じて、TRiSTARが目指す“学問と社会をつなぐ共創の場”の意義が、改めて実感される機会となりました。
柴綾フェロー、伏見龍樹フェローが登壇し、海外研究留学における家庭・仕事の両立経験を共有いただきました。ボストンでの家族帯同留学やイギリスからのリモート研究活動など、現実的な課題と工夫が語られました。討論では「夫婦での同時留学」「子どもの教育環境」「研究資金確保」など具体的なテーマが掘り下げられ、示唆に富む議論へと発展しました。
日程:2025年9月10日(水)~11日(木)
会場:
1日目:天成園 小田原駅 別館(神奈川県小田原市栄町1丁目1−15)
2日目:株式会社トヤマ(神奈川県足柄上郡山北町岸3816−1)
テーマ:Looking Beyond the SDGs: Igniting International Crossover
主催:筑波大学 TRiSTAR
参加者:学内外研究者、企業関係者、海外連携機関研究者 ほか