2025/05/13
TRiSTARフェローおよび事務局メンバーが、2025年3月9日から15日にかけて、シンガポール国立大学(National University of Singapore, NUS)やシンガポール国立科学技術庁(Agency for Science, Technology and Research, A*STAR)などの主要大学・研究機関を訪問し、教育・研究・産学連携を介した国際連携の可能性について、活発な意見交換を行いました。
本訪問は、TRiSTAR事務局の主導により実施され、国際共同研究の深化やグローバル人材の育成に向けた体制強化を目的として行われました。参加者は、TRiSTARフェロー3名(筑波大学の松井 崇助教、朴 寅成助教、茨城大学の笹野 美佐恵講師)に加え、TRiSTAR事務局からは、陳 晨リサーチコーディネーター、竹下 暢昭リサーチコーディネーター、新道 真代チーフURA (Chief University Research Administrator)が同行しました。
訪問期間中、A*STARの研究施設である人間開発・潜在能力研究所(Institute for Human Development and Potential, IHDP)およびシンガポールMITアライアンス研究技術センター(Singapore-MIT Alliance for Research and Technology, SMART))をはじめ、シンガポール国立大学(NUS)、南洋理工大学(Nanyang Technological University, NTU)、シンガポール工科デザイン大学(Singapore University of Technology & Design, SUTD)、シンガポールマネジメント大学(Singapore Management University, SMU)など、複数の大学・研究機関を訪問し、各機関の研究環境や支援制度について情報共有を行いました。また、現地研究者との意見交換や研究成果の紹介を通じて、新たな国際共同研究の展望や人材交流の可能性について具体的な議論がなされました。
本訪問の背景には、2024年にA*STARから日本の大学との連携に関する打診があったことや、同年5月にシンガポールの主要研究機関が筑波大学を訪問し、学生向け奨学金プログラム(SIPGA、SINGA、ARAP)などの情報交換を行ったことがあります。これを受け、今回の訪問では、学生派遣や博士課程の共同指導、国際共同研究の立ち上げに向けた具体的な協議が行われました。
各訪問先では、TRiSTARフェローによる研究紹介に加え、研究支援の視点からの視察やディスカッションが行われ、以下のような成果が得られました。
NUSでは、博士課程学生の受入れ制度や睡眠科学・医学研究分野における協働の可能性、さらに今後のMOU締結に向けた前向きな意見交換が行われました。また、博士課程学生の共同指導体制や学生支援の相互補完について協議し、シンガポールの奨学金制度を活用した教育連携の具体化が進展しました。
NTUやA*STARでは、博士課程学生の共同指導体制や学生支援の相互補完について協議し、シンガポールの奨学金制度を活用した教育連携の具体化が進展しました。
NTUでは新設の化学生物工学分野を含む科学技術領域において、小規模な共同プロジェクトから協力を開始する方針で一致しました。
SUTDでは、スポーツ科学(運動生理・柔道・eスポーツ)と先端工学技術(生体計測デバイス等)の融合による研究連携の可能性が見出され、今後の共同研究の展開が期待されます。
SMUでは、超高齢社会に関する縦断データ(高齢者パネル調査)の共有・分析を軸とした協力の可能性が議論されました。
SMARTでは、産学官連携による先進的な研究モデルやイノベーション創出の取り組みについて情報を収集するとともに、スポーツ医科学やeスポーツの健康応用分野に関する意見交換も行われました。
訪問中、松井崇助教、朴寅成助教、笹野美佐恵講師の3名のTRiSTARフェローが、それぞれの研究成果を紹介し、シンガポール側の研究者と活発な意見交換を行いました。さらに、研究者間だけでなく事務局間の連携も深化し、URAに類似した職務を担う現地担当者とのネットワークが構築され、今後の継続的な支援体制の足がかりとなりました。参加者の多くは、異分野の研究者と対話する中で、自身の研究の新たな可能性を発見し、異文化環境での実体験を通じた学びを得ました。特に、フェローはそれぞれの研究紹介に対して現地研究者から助言を受け、視野を広げるとともに、今後の国際研究活動に向けた意欲を高める貴重な機会となりました。
今回の訪問を通して、TRiSTAR事業の国際展開を支える実践的なサポートの在り方や、異分野融合・マネジメント能力の育成の重要性も改めて浮き彫りになりました。今後、TRiSTAR事務局は、シンガポールの研究機関との継続的な連携構築を支援するとともに、学内外の関連組織と連携し、学生・研究者双方の国際的活躍を後押しする具体的な方策を検討していく予定です。
最後に、参加したフェロー・事務局メンバーからの総括的な振り返りにより、今回の現地交流が今後の国際連携における「触媒」として重要な役割を果たすこと、そして大学・研究機関が共にグローバルな教育・研究ネットワークを深化させていく出発点となることが確認されました。今回の交流を契機に、TRiSTAR事業を通じた連携強化と、アジアの国際拠点としてのシンガポールとの協働が今後さらに進展していくことが期待されます。